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Interview 01

新卒採用は、HR テクノロジーを活用した新時代へ。

いま、ビッグデータや人工知能(AI)を始めとする最新テクノロジーを活用した「HR テクノロジー」に熱い視線が注がれている。 特に新卒採用において、HR テクノロジーを活用した採用の強化・効率化は、今後、急速に進んでいくことが予測される。 日本における HR テクノロジーの第一人者である岩本隆氏に、HR テクノロジーの進化と未来像について聞く。

PROFILE プロフィール

慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授

岩本 隆

HR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)会長・代表理事。 東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻 Ph.D.。 日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012 年から現職。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメント経験を活かし DI では技術・戦略を融合した経営コンサルティング、技術・戦略・政策の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティングの新領域を開拓。

テクノロジーの飛躍的な進化がもたらす、人材マネジメントの大変革。

「HR テクノロジー」とは、テクノロジーを活用して、採用活動、人材育成、人事評価などの人事領域の業務を行うソリューション群を指す言葉で、HR(Human Resource)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。新しい言葉のように聞こえますが、実は約20 年前に米国のLRP Publications という企業が「HR TECHNOLOGY」を、Human Resource Technologies という企業が「HR TECH」を商標登録(その後、権利放棄)しています。 ここ数年で一気に注目度が高まった「HR テクノロジー」ですが、その背景には、コンピューティングやクラウドなどのテクノロジーの飛躍的な進化があります。それまで人事におけるICT の活用は、給与や採用管理など数値化しやすいものから始まり、その後、「タレントマネジメント」と呼ばれる人事の情報管理・活用を統合して行うツールが流行りましたが、いまではビッグデータや人工知能(以下AI)などを使って、人材のレコメンデーションや退職率の予測など、さまざまな新たな機能の実装が可能になっています。それに伴い、人材マネジメントの考え方も、これまでの「タレントマネジメント」から、より高度な「HCM(Human Capital Management)」へ進化しています。 「HCM」は、その名の通り人材をキャピタル(資本)と捉え、パフォーマンスやコストなど、個々の人材に関するあらゆるファクトを計測・数値化してマネジメントしていこうという考え方です。プロスポーツの世界で、個人のデータもチームの成果もすべて数字で表されるように、その人材を、どの部署に配置すれば、どれだけ業績がアップするのか、といったこともHCM により、高精度な予測が可能になります。

欧米を中心に世界へ拡大するHR テクノロジー。そのウェーブは日本にも。

世界規模で市場が拡大するHR テクノロジーですが、その最先端をリードする米国では、1980 年代からHR テクノロジー領域のスタートアップが生まれ、市場の成長を牽引してきました。給与システムや労務管理システムなどを皮切りに、人材のスキルなどをデータ化するタレントマネジメントシステムを開発。2000 年代の半ばには大手ICT ベンダーの参入も相次ぎ、スタートアップへの投資額も急増します。2010 年代に入ってからは、ビッグデータ分析、機械学習、ディープラーニング、AI などのテクノロジーにより、HR テクノロジーの活用が一気に拡大。 数百億円規模の資金調達に成功する企業も現れるなど、さらなる活況を呈しています。その市場規模は現在、約1 兆3 千億円で毎年約8%成長し続けています。一方、日本国内に目を向けると、約1 兆3 千億円の市場規模に占める日本企業(HCM アプリベンダー)の割合は、わずか数百億円に過ぎません。日本ではスタートアップが育たないと言われますが、HR テクノロジーの領域でも同じことが起こっています。それに反して、日本国内におけるHR テクノロジーへの期待は高まり続けており、この期待に応えるべく、国内でもHR テクノロジーの活用を促進させる、さまざまな動きが広がっています。2016 年に開催されたProFuture㈱主催の「HR テクノロジーサミット」とサミットで行った「HRテクノロジー大賞」もそのひとつ。「HR テクノロジー大賞」は、人事にテクノロジーを積極的に導入している企業を募集し、取り組みを審査・表彰することで、HR テクノロジーをより多くの企業に広め、市場を底上げさせることが目的です。この他にも、5 月から開催されている経済産業省とHR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)共催の「HR-Solution Contest」、日本経済新聞グループの「日経Smart Work」の始動、さらに7 月末には「日本RPA 協会」による、RPA・エンタープライズAI の一大イベント「RPA SUMMIT 2017」が開催されます。経済産業省は「働き方改革」を推進しており、労働人口の減少が始まっている日本社会において、一人ひとりの生産性向上のためには、HR テクノロジーの「HR テクノロジー大賞」は、人事にテクノロジーを積極的に導入している企業を募集し、取り組みを審査・表彰することで、HR テクノロジーをより多くの企業に広め、市場を底上げさせることが目的です。この他にも、5 月から開催されている経済産業省とHR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)共催の「HR-Solution Contest」、日本経済新聞グループの「日経Smart Work」の始動、さらに7 月末には「日本RPA 協会」による、RPA・エンタープライズAI の一大イベント「RPA SUMMIT 2017」が開催されます。経済産業省は「働き方改革」を推進しており、労働人口の減少が始まっている日本社会において、一人ひとりの生産性向上のためには、HR テクノロジーの活用が有効と考えています。日本経済新聞グループの「日経Smart Work」は、技術革新で生産性の向上に取り組む企業を支援するプロジェクトであり、HR テクノロジーの普及・拡大に大きな期待を寄せています。また、「日本RPA 協会」は、世界のRPA (Robotic Process Automation)市場における日本のプレゼンス向上を目指しており、特にデジタル上の新しい労働力「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」を活用したRPAの視点から、HR テクノロジーに注目しています。このようにHR テクノロジーの活用を加速させる新しい動きは、一段と活発化しています。

新卒採用の領域で活発化するHR テクノロジーの活用。企業が行うべき5 つのポイント。

HR テクノロジーは人事領域における、あらゆる業務を行うソリューション群ですが、その中でも新卒採用におけるHR テクノロジーの活用は、特に期待を集めており、その導入も活発化している領域です。HR テクノロジーの活用で企業側が行うべき主なポイントは5 つあります。 1 つ目は、新しいテクノロジーを積極的に活用すること。SNS やIBM「Watson」のような認知科学に基づいたコグニティブツール、ビデオやゲームの活用などがあげられます。 2つ目は、自社の採用サイトに注力すること。日本の採用は大手採用メディアへの依存度が高く、ほとんどの企業が自社独自の採用ブランドを構築できていません。本当に伝えたいこと、伝えるべきことが整理されておらず、アップデートも行われていないサイトが数多く見受けられます。画一的な大手採用メディアの中に埋没するのではなく、自社サイトに力を入れて、いかに自社独自の採用ブランドを構築できるか、これは日本の採用においては、特に重要度の高いテーマだと私は考えています。 3つ目は、魅力的なキャンディデイト・エクスペリエンスの構築です。キャンディデイト・エクスペリエンスは、「キャンディデイト(候補者)」と企業が接触するプロセスで、優秀な候補者に、いかに「自社の魅力を体験」させて、惹きつけられるかを、テクノロジーを使ってマネジメントします。HR テクノロジーによるキャンディデイト・エクスペリエンスの構築は、従来のメカニカルな対応ではなく、企業と候補者のデータ分析に基づいています。たとえば、この候補者には、どんな性格やコミュニケーション能力を備えた採用担当者をぶつけるべきか、といったマッチングも可能になります。

人材獲得のチャンネル拡大と部門横断的なチャンネル統合も必須。

4つ目は人材獲得のためのチャンネルを広げること。これまで日本では、新卒一括採用を行い終身雇用するスタイルが一般的でした。しかし、いまやこのスタイルは崩れ、人材は流動化しつつあります。また、フルタイム、パートタイム、フリーランス、クラウドワーカー、ギグワーカーなど、働き方も多様化しており、今後は新卒のみならず、これら人材の活用も視野に入れ、人材獲得のチャンネルを広げることが重要な時代になってきました。 5つ目は、人材獲得のチャンネルの統合です。人事部門だけでなく、ビジネス、調達、ICT など、他部門と連携し、社外スタッフも自社の人材と捉え、部門横断的に人材獲得のチャンネルを統合して人事全般を見ていくことが必要です。以上の5 ポイントが採用領域におけるグローバルな先端トレンドですが、現在、日本で、このレベルまで到達している企業はほとんどありません。その意味では、日本の採用におけるテクノロジーの活用は始まったばかりであり、今後、数多くの成功事例が出てくることは間違いありません。

「リクルーティング」から「タレント・アクイジション」へ。多種多様なテクノロジーが採用を変える。

一方、HR テクノロジーの技術的側面から見ても、採用はタレント・アクイジション(Talent Acquisition)と呼ばれる大きな領域であり、新しいテクノロジーが次々と参入しています。欧米では、つい数年前まで、採用部門の担当者と名刺交換をすると、その役職名は「リクルーテ ィング○○」が圧倒的多数を占めていましたが、最近では「タレント・アクイジション○○」へと名称を変えている企業がほとんどです。企業側や事業部門側が定義した、採用したいポジションに適切な人材を探して獲得・補充する、従来の「リクルーティング」に対し、タレント・アクイジションは、自社のブランド力を高め、必要とするタレント(有能な人材)を定義し、クラウド上にある膨大な情報に対して、ビッグデータやAI など、さまざまなテクノロジーを駆使し、積極的にタレントにアプローチします。採用部門は、時々の状況に応じて採用プロセスを変化させ、新しい手法を駆使するなど、より戦略的なポジションへと進化しています。現在、タレント・アクイジション領域にあるHRTech サービスは米国を中心に28 種類あり、求職・企業それぞれに寄った、ソーシング、エンゲージメント、採用に至る、多種多様なテクノロジーで採用戦略を新しい時代へ進化させています。

HR テクノロジーは、人間のリソースを有効活用し、付加価値と生産性を高めるためにある。

いま、日本の採用は、HR テクノロジーの活用によって、大変革期を迎えようとしています。応用範囲の広いHR テクノロジーの中でも、採用領域は最もテクノロジーの活用が活発な分野であり、これまでマンパワーに頼っていた業務も、テクノロジーで出来ることがどんどん増えています。これからの採用は、テクノロジーを活用し、採用生産性を高め、求める人材をいかに効率的に獲得できるかが勝負のポイントになります。テクノロジーで可能となることはテクノロジーに任せることで効率化を実現し、貴重な人間のリソースをどこに注ぐべきかを考え、付加価値向上に取り組む。それが企業全体の生産性を高めることにつながるのです。
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